離婚に関して誤解が多い3つのこと

こんにちは、函館の行政書士 小川剛弘です。

離婚を考えたとき、養育費や財産分与、慰謝料、年金分割などさまざまな情報を

得ようとします。そのため、これらの知識については調べていくうちに詳しくなっていくものです。しかし、意外と知られていない大事なことがあります。

そして、これらを知らずに離婚しようと考えていると、肝心の離婚ができないばかりか、犯罪に問われることにもなりかねません。また、離婚後の自分や子どもの生活にも影響が少なからず出る場合があります。今回は、離婚に関して意外と知らない大事なことについて3つをご紹介します。

勝手に離婚届を提出してしまう

婚姻、離婚、養子縁組、養子離縁及び認知は、市区町村役場に届出することによって身分関係に変動が生じます。

これらの届出は、本来、当事者が話し合って届出されることを前提にしています。

しかし、役所としては、話し合いがなされたかどうかという部分は審査することはなく、提出された届出に形式的な不備や問題がなければ受理してしまいます。

そのため、一方の当事者の意思のみで、勝手に離婚届出を提出してしまうことは可能です。

たとえば、相手が離婚を渋りなかなか離婚に合意してくれないことに業を煮やし、「それなら自分が離婚届を書いて役所に提出してしまえばいいじゃないか」と考えてしまうかもしれませんが、それをすると、電磁的公正証書原本不実記録罪(刑法157条1項)、有印私文書偽造罪(刑法159条1項)、偽造有印私文書行使罪(刑法161条1項)などの罪に問われる可能性があります。

そして、離婚届が無断提出された場合は、相手の本人確認が出来ていないため、後々役所から相手に対し「離婚届を受理しました」という通知が送付されることになっています。この通知により、離婚届が勝手に出されたことを相手が知ると、この離婚の無効を求めて、離婚無効調停や離婚無効訴訟を起こす可能性があります。そして、勝手に離婚届が提出された事実は明らかだと裁判所が認めると、離婚は無効になってしまいます。

くれぐれも勝手に離婚届を提出しようなどとは考えてはいけません。

また、逆に相手が自分の意思とは無関係に離婚届を提出してしまうのではないかと心配なら、あらかじめ役所に「離婚届不受理申出」の手続きをしていれば、相手が勝手に離婚届を提出しても受理されることはありません。

離婚届不受理申出は、申出人が取下げをしない限り有効です。

離婚について話し合いもせず、勝手に離婚届を提出される心配があるなら、離婚届不受理申出の続きをしておいてから、じっくり離婚についての話し合いをすべきでしょう。

そして離婚に合意ができたら、申し出をした本人が離婚届不受理申出を取り下げて、その後離婚届を提出するという流れにすると良いでしょう。

離婚後すぐに再婚できる - 女性の再婚禁止期間-

離婚後、男性はすぐに再婚できますが、女性の場合には、妊娠していた場合子どもの父親が誰なのか?という問題が発生するため、「再婚禁止期間」というもの定められています。

以前、この「再婚禁止期間」は6か月だったのですが、平成28年に民法が改正され、「100日間」に短縮(ただし、離婚したときに妊娠していないことの医師の証明書があれば、離婚後すぐにでも再婚できる)されました。そしてさらに、令和4年12月に再婚禁止期間を廃止する法案が成立し、令和6年4月1日から施行されることになりました。

離婚後すぐに再婚を考えている女性は知っておくべきでしょう。

自分の氏が旧姓に戻ったら子どもの姓も勝手に変わる

夫婦が離婚しても、子どもの氏は当然には変更されません。

離婚して妻が旧姓に戻り、子どもの親権者である場合でも、自動的に子どもの姓が変わるわけではありません。

そのため、母親と子どもの氏が異なるということになります。

たとえば、母親が離婚後も婚姻中の氏を名乗るために「婚氏続称」の届け出をしたとしても、婚姻中の氏と離婚後に続称の手続をとった氏は、法律上、別の氏とされます。

とても分かりにくいのですが、呼び方は同じ氏であっても、その親と子の氏は異なることになります。たとえば、山田花子さんが田中次郎さんと結婚して、夫婦で田中という氏を名乗ることと決め、2人の間に三郎という子どもが生まれたと仮定してみます。

その後、花子さんと次郎さんは三郎さんの親権者を花子さんとして離婚をしたのですが、花子さんは離婚後も田中の氏を名乗ることを希望して、婚氏続称の手続をしました。

この場合、花子さんと子の三郎さんは同じ田中ですが、法律上は別の氏として扱われます。

この理由は、上記の例でいえば、三郎さんの戸籍については、父親である次郎さんの戸籍に入ったままであり、母親である花子さんだけが、戸籍から抜ける形になるからです。

子である三郎さんの籍が、自動的に親権者である花子さんの戸籍に移動することはありません。また、子どもと親の氏が異なる場合、子どもは親の戸籍に入ることができません。

離婚によって氏を改めた親が親権者となり、子どもを自分の戸籍に入れたい場合には、家庭裁判所に対して「子の氏の変更許可」を申し立てて、子どもの氏を自分の氏と同じにする手続きが必要です。

なお、母親が婚姻前の親の戸籍に戻った場合、母親がその戸籍の筆頭者ではない場合には、子どもがその氏を変更しても、その戸籍に入ることができません。

こうした場合は、子どもの親を筆頭者とする新しい戸籍がつくられることになります。戸籍は夫婦および夫婦と氏を同じにする子どもごとにつくられると決められているため、親が戻った戸籍の筆頭者がその母親の両親(子どもにとっては祖父母)の場合、親、子、孫の三世代の戸籍になってしまい、これは、戸籍法上認められていません。

そして、子の氏の変更が許可された後は、 入籍届を本籍地または所在地の市区町村役所へ提出する必要があります。

入籍届を提出することで戸籍謄本の氏、住民票の氏が変更されます。役所への入籍届には期限がありませんが、役所によっては、届出までに2週間以上経過をしている場合は、その理由を求めるところもあります。

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