借金がある場合の遺産分割について

こんにちは、函館の行政書士 小川剛弘です。
相続というと、どうしても土地や建物などの不動産や預貯金や現金などプラスの財産をイメージしがちですが、被相続人(亡くなった方)に借金など債務などがあった場合、その債務も相続の対象となりますが、いざ遺産分割を行おうとしたときに、どのようなことに気を付けなければならないのでしょうか?
相続財産にはマイナス財産も含まれる
相続が発生することにより、被相続人(亡くなった方)が有していた財産が相続人に承継されることになります。そして、この承継される財産にはプラスの財産だけではなく、負債などのマイナスの財産も含まれます。
そして、相続財産の中にマイナス財産がある場合、相続人は法定相続分に応じて債務を引き継ぐのが原則なのですが、遺産分割協議をして、相続人のうちの一人がマイナス財産を相続することもあります。
このように、相続人間で遺産分割協議をして、法定相続分とは異なる相続をすることも可能です。しかし、法定相続分と違う割合で相続することに合意したとしても、その合意は相続人の間でのみ有効であり、そのことを債権者(金融機関等)に対して主張することはできません。
【具体例】
相続財産 現金4000万円
借金2000万円
相続人 子A、B、C、Dの4人
遺言書無し
この例で法定相続分通り相続した場合、子4人は、それぞれ現金1000万円と借金500万円を相続することになります。
しかし、相続人が、遺産分割協議で法定相続分と異なる遺産分割をした場合、例えば、Aは借金の全額2000万円と現金3000万円、B、Cはそれぞれ現金500万円、借金0円、Dは、借金も現金も相続しないということで合意したとしましょう。
この場合、相続人4人の合意があれば法律的には有効で、A、B、C、Dは、この合意内容に拘束されます。すなわち、Aが借金を払わなくても、B、C、DはAから「自分の代わりに払ってくれ」という申し出に応じる義務はありません。
借金の遺産分割は債権者に対抗できない
しかし、B、C、Dは、債権者から500万円(それぞれの法定相続分)の借金を返済して下さいという請求に対しては、拒むことはできず、支払う義務があります。
このことを「債権者には対抗できない」といいます。
もちろん、B、C、Dの債権者に対する返済は、相続人間の合意内容とは違いますから、B、C、DはAに対して、それぞれ500万円を請求(求償)することができます。
では、なぜ法律はこのように規定しているのでしょうか?
理由は、もし相続人間の遺産分割協議の合意が債権者に対抗できるとなると、相続人が返済できなくなってしまった場合、債権回収ができなくなってしまい、過大な損害や負担を被ってしまうからです。
債権者にしてみれば、被相続人(亡くなった人)が「この人なら返済してくれるだろう」と思ったからこそお金を貸したのです。ですから、債権者にしてみれば、信用できないかもしれない人(借金を返してくれそうにない人)に相続してもらっては、後々返済してもらえなくなる可能性があるのです。
法定相続分については「法律で定められている」ので仕方ないけれど、遺産分割のように、相続人の間で勝手に借金を肩代わりする相続人を決めてもらっては困るのです。
このような事情で、借金についての遺産分割は、「債権者に対抗できない」、ということになったのです。もちろん債権者が相続人間の合意内容について承諾すれば、借金を相続しなかった相続人が返済を請求されることはありません。これを「免責的債務引受」といいます。
借金(債務)を引き継ぎたくない場合、相続放棄という手段もある
相続では、強制的に相続人に遺産を引き継がせるものではありません。相続人が希望しなければ相続しないことも可能なのです。
相続財産について、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多い場合、相続人は債務の返済をしていかなければならないことになります。こういった場合に一切相続をしない「相続放棄」という方法を選択することで借金の返済を免れることができます。
相続放棄をした場合、その相続に関しては、最初から相続人とならなかったものとみなされます。そのため、借金(債務)などを相続する必要はなくなります。
しかし、最初から相続人とならなかったものとみなされるため、借金などのマイナス財産だけでなくプラスの財産も承継できなくなります。相続放棄は、原則として「相続の開始を知ったときから」3ヶ月以内にしなければいけないので、相続放棄を選択肢として考えるのであれば、できるだけ早急に手続きされることをお勧めします。
相続放棄をするためには家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出する必要があります。詳しくは裁判所のホームページをご覧ください。
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