一方的に提示された離婚協議書に速攻サインはNGです

こんにちは、函館の行政書士 小川剛弘です。

だれにでも、「あのときこうしておけば良かった…。」と後悔したことってありますよね。

それが離婚だった場合、とにかく一刻も早く別れたい一心で、相手の提案した条件について、じっくり考えずに離婚届に署名捺印してしまうと、後々悔やむことがあります。たとえば、次のようなケースの場合、離婚後に慰謝料や財産分与の請求は可能でしょうか?

<例>

私は、長い間、夫の浮気に悩まされ、精神的にも限界に達してしまい、とにかく一刻でも早く離婚してこの現実から逃れたいとの思いから、よく考えもせず夫が提示してきた養育費や慰謝料、財産分与など金銭の要求を一切しない内容の離婚協議書に署名と捺印をして離婚してしまった。

しばらくして、新しい生活にも慣れ、離婚のことも冷静に考えられるようになってくると養育費や慰謝料、財産分与など、あのとき自分が放棄したお金があれば、今の生活はもっと楽だったはずなのに…。

特に養育費がないことで、子どもの学費や医療費の負担が大きく、このままでは、子どもの成長にも支障がでてくるかもしれない。

一時の感情に任せてよく考えもせず、離婚協議書にサインしてしまったことを後悔している。

できるなら、離婚時に交わした離婚協議書を白紙に戻して、あらためて元夫に養育費や慰謝、や財産分与について請求したいと考えている。

でも、そんなことは可能なのだろうか?

慰謝料、財産分与は離婚後も請求可。ただし期限に注意

基本的に、離婚が成立した後にでも、慰謝料、財産分与について、それぞれ次の期間を経過しなければ請求することは可能です。

・慰謝料  離婚成立の日から3年

・財産分与 離婚の日から2年

慰謝料や財産分与の請求放棄を文書に記載していた場合

しかし、上記のようなケースの場合、慰謝料や財産分与を請求しないという離婚協議書や合意書など文書に署名と捺印をして離婚した場合はどうなるのでしょうか?

結論をいえば、これらの文書に署名捺印してしまった後では基本的に相手へ請求することは難しいでしょう。離婚協議書や合意書そのものには法律的な強制力はありませんが、相手方に離婚協議書や合意書など契約の取消しを要請しても拒否されたり、調停を申し立てたとしても、相手方に文書の存在を主張されれば当然不利になってしまいます。

よほど、その内容が脅迫のような法律に抵触するようなものでない限り、現実的に慰謝料や財産分与を請求することは難しいかもしれません。

養育費の場合は考え方が違う

養育費を請求しない旨の合意も、夫婦間では有効なものと取り扱われます。したがって、「養育費を請求しない」という合意をした場合には、原則として後から養育費を請求することはできないとされています。

しかし、民法には、子どもの扶養を受ける権利は放棄することはできないと規定されています。

民法881条   扶養を受ける権利は、処分することができない。

つまり、親同士が養育費を請求しない旨の合意をして離婚協議書などの文書として残していたとしても、子どもの扶養を受ける権利は守られるべきものであり、子どもに著しく不利益が生じることは認められません。

そのため、養育費を請求しない旨の合意の効力がそのものが否定され、請求が認められる場合や、子から扶養請求することが認められる場合があります。

一度冷静になって考えてみる

上記のケースのように、離婚を急ぐあまり、相手にばかり有利な内容であるにもかかわらず、署名捺印してしまい後悔するということが本当に多いのです。

特に調停や裁判などと違って、夫婦二人だけで話し合って離婚する場合には、中立的な第三者が介在することが少ないため、そういうことが起こり得るのです。

では、離婚後後悔しないためにはどうすればいいのでしょうか?

こういった場合、相手から離婚協議書や合意書などを一方的に提示されても、その場ですぐに決断せず、いったん心を落ち着けて内容を確認しましょう。

出来る限り時間をかけてじっくり考え、それでもどうしたら良いかわからない場合には、専門家に内容を確認してもらうと良いかもしれません。

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