離婚と生活保護

こんにちは、函館の行政書士 小川たけひろです。
離婚を決めたものの、貯蓄も収入もなく、慰謝料や財産分与も当てにできない場合には生活保護を受けるのも、ひとつの手段です。
ただ、生活保護は支給条件によって受給できないケースも多くあります。では、生活保護を受けるためには、どうしたら良いのでしょうか?
また、生活保護を受給することで様々な“制限”が発生することもあります。その点も含め、生活保護とはどんなものかを理解していきましょう。
生活保護とはどのような制度か?
生活保護制度は、「生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としています。」とされています。
生活保護制度は、憲法25条が定めている、国民が「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障するために設けられたものです。
このため、生活に困窮する人は、その困窮の程度に応じて、必要な保護を受けられるようになります。
生活保護を受けるための条件は?
上述のとおり、生活保護制度は、国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を実現するための制度です。そのため、生活をしていくうえで、十分な収入や資産がある場合には、最低限度の健康で文化的な生活をしていけるとみなされるため、生活保護を受けることができません。
したがって、収入や資産、その他あらゆるものを集めても、健康で文化的な最低限度の生活水準を下回る場合に生活保護を受けることができるのです。
生活保護を受けるための具体的条件は以下のとおりで、この条件を全てを満たしている必要があります。
① 預貯金や使用していない不動産などの資産がない
② 生活を援助してくれる家族や親類がいない
③ 病気や怪我で仕事ができない
④ 上記の3つの条件を満たしている状態で、厚生労働省が定めた最低生活費の基準額を下回っていること
生活保護では、どんな費用が扶助されるのか?
生活保護では、以下のような、生活を営む上で必要な各種費用に対して扶助されます。
① 生活扶助(食費、被服費、光熱費等の日常生活に必要な費用に充てられる扶助)
② 教育扶助(義務教育を受けるための学用品等に充てられる扶助)
③ 住宅扶助(住宅の家賃等に充てられる扶助)
④ 医療扶助(医療サービスを受けられる扶助)
⑤ 介護扶助(介護サービスを受けられる扶助)
⑥ 出産扶助(出産費用に充てられる扶助)
⑦ 生業扶助(就労に必要な技能の習得などに充てられる扶助)
⑧ 葬祭扶助(葬祭費用に充てられる扶助)
生活保護を受給している場合、養育費はもらえるの?
生活保護を受けている場合であっても、元の配偶者から養育費をもらうことができます。養育費等、元配偶者からの扶養については、生活保護よりも優先して行われます(生活保護法4条2項)。つまり、生活保護の申請をする際は、まず元配偶者の扶養を受け、それでも最低生活費の基準額を下回る場合に生活保護を受けられるのです。
また、生活保護を受けていたとしても、それを理由として養育費が減額されるということはありません。
児童扶養手当などの各種手当と生活保護の関係は?
生活保護は、経済的な困窮を理由として支給されますが、児童扶養手当や児童手当、ひとり親に対する助成など、行政から受けることのできる各種手当は、現在の家庭環境が一定の条件を満たす場合に支給されます。
これらの手当は、養育している子どもの年齢や母子(父子)家庭などのいわゆる「ひとり親世帯」であるか否か、収入額などにより支給の可否や支給額が決定されます。
生活保護と行政の各種手当の関係は、行政からの各種手当を優先します。そのため、収入、元配偶者から受け取る養育費、行政からの各種手当をもらっていたとしても、直ちに生活保護を打ち切られるわけではありません。ただし、養育費の額、各種手当の額を合算して、生活保護の水準を上回る世帯収入となる場合には、生活保護を受けることができなくなります。
生活保護を受けることによる制限
生活保護は、最低限度の生活を保障してくれる制度ですが、制限も存在します。
ローンを組めなくなる
まず、生活保護を受給すると、ローンで物を買ったりするといった借金をすることができなくなります。
不動産や車を所有できない
また、不動産を所有したり、特殊な事由がない限り、車を持つことができません。そして車を運転すること自体を禁止されます。
生命保険の加入・医療機関の受診にも制限がかかる
生命保険も、保障内容の薄い、掛け捨て金の安価なもの以外入れなくなります。また、生活保護を受給すると、国民健康保険証を役所へ返却しなければならず、無保険の状態となります。
そして、国民健康保険証の代わりに、「医療券」というものをその都度役所で発行してもらい、病院へ持参して受診することになりますが、緊急時以外は指定の医療機関のみでしか診療を受けることができません。
居住場所の制限
そして、生活保護の受給者は居住場所も制限されます。支給される住宅扶助の限度額を超える家賃の住居に住むことはできません。限度額を超える家賃の住宅に住んでいる場合は転居を求められますが、転居にかかる費用そのものは支給されます。
報告義務と指導助言に従う義務
生活保護を受けていると経済状態を福祉事務所に報告する義務が生まれ、ケースワーカーが必要に応じて家庭訪問し、調査することもあります。基本的にケースワーカーからの指導や助言には従わなければいけません。
「生活福祉資金貸付制度」を利用するのもひとつの手段
生活保護を受けるほどの状態ではなく、生活保護を受けられないとしても、一定の条件にある場合、当面の生活費用の貸付が受けられる、「生活福祉資金貸付制度」があります。
この「生活福祉資金貸付制度」は、所得の少ない世帯等に対し、無利子または低利子で資金の貸付を行うものです。生活保護の支援とは異なり貸付なので、返済義務があります。
しかし実際問題として、支給条件が厳格な生活保護費に期待するよりは、「生活福祉資金」を借りる方が現実的と言えるかもしれません。返済義務はありますが、この資金制度を利用することによって、一時的に生活に余裕を持たせて、その間に次のしっかりした生活環境を整えていくのも一つの方法だと思います。
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