離婚したら医療保険はどうなるのか?

こんにちは、函館の行政書士 小川剛弘です。

離婚すると、生活が変わります。

そのため、しなければならない手続きもありますが、優先順位が高いもののひとつに保険があります。

婚姻中、妻や子どもは、夫の「扶養家族」になっていることが多いですが、離婚すると、扶養家族ではなくなるため、夫の保険を使うことができなくなります。そうすると、いざというときに保険が使えないといったことが起こってしまいます。

そうならないために、離婚後、早い段階で手続きをしなければなりません。

では、実際どのような保険について、どのような手続きをすれば良いのでしょうか。

この記事では、離婚に伴ってしなければならない保険の変更手続について解説していきます。

離婚したら保険はどうなる?

離婚届を提出し、離婚が成立すると夫婦関係が消滅しますが、それまで配偶者の保険に加入していた場合、「扶養家族」から外れることになります。そのため、保険についての手続きは自分で行わなければなりません。

公的医療保険とその種類

日本では、すべての国民が医療保険に加入することになっています。これを「国民皆保険制度」といいます。

公的医療制度の種類

日本には、①被用者保険(健康保険・共済制度)②国民健康保険③後期高齢者医療制度という公的医療保険制度があり、医療機関で受診した際の医療費を一定の割合で保障してくれます。

被用者保険(健康保険・共済制度)

被用者保険には、民間企業に勤める社員とその扶養家族が加入できる「健康保険」と、公務員や教職員などを対象とした「共済制度」があります。

国民健康保険

国民健康保険は自営業者やその家族、無職の方、年金受給者、学生、農林水産業に従事する方などが加入する保険です。

後期高齢者医療制度

後期高齢者医療制度は、75歳以上もしくは65歳以上で障害を持つ高齢者が加入する公的医療保険制度です。

そして、多くの場合、妻(夫)や子どもは、夫(妻)の公的医療保険に加入して利用しているのが一般的です。

そのため、離婚すると、夫婦関係が解消されてしまうため、今まで利用できた医療保険を引き続き利用することができなくなり、新たな医療保険への加入手続をしなければなりません。

ご自分がどの種類の医療保険に加入していたか、そして、離婚後どの医療保険に加入するかによって、脱退・加入手続が違いますので、被用者保険、国民健康保険について場合分けして説明いたします。

配偶者の会社の医療保険に加入していた場合

たとえば、夫が会社員で、妻が専業主婦であるようなケースです。

配偶者(夫)が勤めている会社の公的医療保険の被保険者(妻)として加入しており、離婚によって扶養家族から外れるので、同じ保険を今までどおり継続して利用することはできません。

離婚後も仕事をせず無職である場合、あるいは、自営業者になる場合やパートで働くような場合には、国民健康保険に加入します。また、就職するのであれば就職先の医療保険に加入することになります。

国民健康保険に加入する場合

配偶者の会社の医療保険に加入していた方が、離婚後、自分を世帯主とした国民健康保険に切り替える場合、まずは配偶者の勤務先で「健康保険の資格喪失手続き)」をしてもらいます。

この手続きが完了すると、「健康保険資格喪失証明書」が発行されるので、これをお住まいの市区町村役場に提出して、「国民健康保険の加入手続き」を行います。

届出先 住所地の市区町村役場

届出期限 被扶養者の資格喪失から14日以内

提出書類 「健康保険資格喪失証明書」

扶養家族として国民健康保険に加入していた場合

たとえば、夫が自営業者で妻が専業主婦であるようなケースです。

一般的な給与所得者が加入する社会保険には扶養制度があり、配偶者や生計を一にしている親族を扶養に入れることが可能です。しかし、国民健康保険には扶養家族という考え方はないので、保険料は世帯全員分で算出されます。

そのため、離婚すると別々の世帯となるので、手続きが必要となります。

配偶者を世帯主とした国民健康保険から、自分を世帯主とした国民健康保険に切り替えるためには、市区町村役場で手続きを行いますが、離婚後に住まいを移すかどうかによって、手続き内容が違ってきます。

離婚後、引っ越さずに現在の住まいに残る場合には、役所で「世帯主の変更手続き」を行います。一方、別の市区町村に転出する場合には、転出元の役所で「国民健康保険の資格喪失手続き」をして、転出先の役所で「国民健康保険の加入手続き」を行います。

自分の会社の医療保険に加入していた場合

自分が会社の社員で、配偶者とは別に公的医療保険に加入しているケースです。

夫婦がそれぞれの仕事先で医療保険に加入していれば特別手続きは必要ありません。

しかし、姓が変わったり、配偶者を扶養家族として医療保険に加入させていた場合は、手続きが必要となります。

・姓が変わった場合→被保険者氏名変更(訂正)届を提出

・被扶養者に変更がある場合→健康保険被扶養者(異動)届を提出

自分が世帯主として国民健康保険に加入していた場合

自分が自営業者で国民健康保険の世帯主だった場合は、家族が抜けることで保険料額が変わります。このケースでは、自分の保険証はそのまま使用できます。ただ、現在住んでいる市区町村から転居する場合には、転出元・転出先それぞれの市区町村での手続きが必要になります。

子どもの医療保険の手続きはどうなる?

離婚して母親が親権者となり、子どもを引き取ったとしても、父親から養育費を支払ってもらえるような場合には、父親が加入している健康保険の被扶養者にすることができる場合があります。

父親は親権を持たずかつ同居していなくても、子どもを父親の扶養に入れることは可能です。

ただし、父親がある程度の養育費を支払っている必要があります。

そのため、養育費の支払いをしていない場合や支払いをしていたとしても金額が低い場合には、扶養の実態がないと判断され、被扶養者として認めてもらえないことがあります。

離婚前から、子どもを父親の健康保険の被扶養者にしていた場合、離婚後も父親の扶養のままにしておけば、そのまま使用できます。子どもが小さいうちは、急な発熱や怪我をなどのため、医療機関を利用することも多いため、そのままにしておくことが安心かもしれません。

ただ、保険証の受け渡しをはじめ、書類に関しての手続きが必要となる場合があり、離婚後も親同士が連絡を取ったり、書類のやり取りをしなければならない場合があるなど、デメリットもあります。

そのため、離婚後の子どもの医療保険については、子どもを監護養育している親権者の方が加入する保険の被保険者になるケースが一般的です。

もし、婚姻中、子どもの健康保険が配偶者の被保険者になっていて、離婚後、自分の医療保険に加入させたい場合は、自分が利用している医療保険の窓口で手続きを行わなければなりません。

現在子どもが加入している医療保険が「国民健康保険」の場合

離婚後は、両親が別世帯となるため、基本的にそのまま保険証を使い続けることができません。離婚届を提出するときに、一緒に手続きをしてしまえば効率的です。

手続の際に必要なものは、お住まいの市区町村役場に問い合わせてみると良いでしょう。

子どもを「国民健康保険」に加入させたい場合は→お住まいの市区町村役場

子どもを、自分の勤務先の医療保険に加入させたい場合は→勤務先

民間の医療保険の手続き

民間の生命保険や医療保険に加入している場合は、離婚後、苗字や住所、受取人の変更などの手続きを行う必要がある場合が多く、速やかに保険会社に連絡して手続きを行いましょう。

離婚後でも手続きはできますが、契約者が自分ではない場合は、契約者本人が書類を記載する必要があり、連絡を取ったり、場合によっては顔を合わせることもあるため、できれば、離婚届を書くタイミングで準備すると良いかもしれません。

離婚すれば家族構成も変わります。変更手続きのタイミングで、保険の保障内容の見直をするのも良いかもしれません。

保険料の支払いが難しい場合

ご自分が、正社員として会社に勤務している場合、ほとんどの会社が給与から健康保険料や年金を差し引いています。そのため、保険料が不払いになる心配はありません。

会社に勤めている場合には、支払いができなくなるといった心配はほぼありませんが、自営業やパートで仕事をしている方については、様々な理由で、医療保険料が払えないこともあるかもしれません。

では、保険料が支払えなくなったらどうのようにすれば良いのでしょうか?

公的医療保険の保険料が払えない場合

お住まいの市区町村役場の国民健康保険を担当している窓口で相談してみましょう。

このとき、現在のご自分の生活状況を正直に話すことが大切です。

国民健康保険の場合、免除の申請を行います。申請者の状況によって、「全額免除」「4分の3免除」「半額免除」「4分の1免除」が認められます。

ご自分がどの段階で認められるのか相談してみましょう。

免除が認められたとしても、永続的なものではなく、次回からどうなるかはわかりません。

そのため、一刻も早く生活を建て直し、保険料の支払いができる状態に戻すことが大切です。

離婚後に生活が苦しくなり、健康保険料の支払いができないという状況になったときに、保険料を滞納してしまう人がいますが、それは大変危険なことです。

滞納が続くと、延滞金が加算され、受けられる給付の一部停止、財産の差押えなどの法的な措置を受けてしまうこともあり、社会生活ができなくなってしまう危険もあります。

支払いに困ったら、必ず市区町村役場役所に相談しましょう。

民間医療保険、学資保険料などが払えない場合

民間の医療保険に加入している場合、保険料の未納が何回か続くと保障が失効してしまうことが多いです。そのため、まずは、保険会社に相談してみることをお勧めします。

また、子どもの教育資金の準備のため、学資保険に加入している方も多いのではないでしょうか。

最近では、学資保険と医療保険がセットになった保険サービスもあります。

将来の進学や不意の病気や怪我などに備え、まとまったお金を用意できるのはとても助かります。

ただ、これらの保険の場合も他の保険料と同様、滞納が続けば失効してしまいます。

失効してしまうと、保険期間が満了しないことになるので、祝い金や満期金を受け取る権利もなくなってしまいます。

そのため、生活状況に応じて保険内容を見直し、「特約」を外すなど取捨選択して、保険料の負担を減らすことをお勧めします。

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