離婚公正証書の作成を拒む夫 どうすればいい?

こんにちは、函館の行政書士 小川たけひろです。

離婚の際に、離婚公正証書を作成される方は多いですが、いざ、作成したいと思っても、相手が応じてくれないということがあります。理由は様々ありますが、この記事では、公正証書作成に応じてくれない、配偶者の理由と対処法について解説いたします。

 配偶者が公正証書の作成を拒む理由

離婚をする気がない

そもそも、相手が離婚を望んでいない場合、離婚公正証書を作ること以前に、離婚についての話し合いをも拒絶するかもしれません。

離婚するかどうか迷っている

離婚することには合意しているけど、自分の方から離婚を切り出したわけではない場合、積極的に離婚公正証書を作ろうとは思わないかもしれません。離婚の意思が固まっているわけではないので、積極的に離婚条件について話し合おうとしません。なので、次の段階である公正証書の作成にも進めないということになります。

強制執行されるかもしれないという恐怖がある

毎月払いが原則の養育費や、多額の慰謝料を分割で支払う場合、公正証書を作成することはとても有益なことです。

理由は、万一、これらが不払いになったら、相手方の給与などを差し押さえて、そこから、目的の金額を回収することが可能になるからです。しかも、未払い分だけではなく、将来支払われることになる分まで回収できることになります。

このことは、子どもを監護養育する側からすれば、とても大きな助けになります。

しかし、逆の見方をすれば、養育費や慰謝料を支払う側(多くは夫側)からすれば、毎月自分の給料の半分(最大)近くまで無くなってしまうことになるので、大変なプレッシャーになることでしょう。

そして、まず、妻から「公正証書を作りたいから協力して」と申し入れされた夫は、「離婚公正証書って何だ?」とネットや書籍などで調べることでしょう。

そして、公正証書を作成すれば、養育費や慰謝料などが支払われなくなった場合、「強制執行によって給料を差し押さえされる」という公正証書の効力について書かれているのを見つけて不安になってしまうことでしょう。

自分は、決めたことをまじめに支払うつもりではあるけど、会社が倒産したり、病気や怪我で働けなくなった場合に、強制執行されるのが怖いと感じてしまう人もいるでしょう。

また、最初から養育費なんて支払うつもりがないといった人もいます。

そして、たとえば、最初から養育費や慰謝料などを支払う気がなく、一刻も早く離婚したいと考えている配偶者などは、公正証書の作成について協力をお願いすると、決まって「俺が払うって言っているのに信じられないのか?」「文書を作るのはかまわないけど、公正証書にしなくてもいいだろ。」という決まり文句を言い出します。

「文書を作るのはかまわないが、公正証書にしなくてもいいだろ。」という理由は、例えば、養育費や財産分与などについて取り決めしたことを、公正証書にしていない「離婚協議書」だと、万一不払いになった場合、簡単には強制執行できないことを知識として知っているからです。

離婚協議書はあくまで夫婦間での取り決め内容を書面にしたものです。証拠能力という面では、たしかに有効でしょうが、これを裁判所に持っていって、「相手方が養育費を支払ってくれないので、すぐに強制執行してください。」とお願いしてもそれはできません。離婚協議書の場合は、債権者(お金を支払ってもらう側が裁判を起こして判決をもらわなければ強制執行はできません。

そのため、こういった知識を持っていると、全く支払う気もなくその場しのぎの合意をしたり、最初の数回は支払いをしてもいずれ支払わなくなる可能性が大きいです。

公正証書作成の手続きが面倒

公正証書を作成するのには少し手間がかかります。公証役場に出向いたり、公証人に相談したり、必要書類の収集したりといったことが煩わしく感じて、公正証書の作成に消極的になっている可能性があります。

公正証書を作成する場合、少なくとも一度は公証役場に足を運ぶ必要がありますし、公証人が作成した文案を確認しなければなりません。また、作成にあたって、戸籍や印鑑証明、不動産などの財産分与があれば、登記関係の書類や固定資産税に関する証明書など添付書類を取り寄せる必要があります。

取り決め事項が多くなれば必要書類も増えます。

また、こういった、公的な書類は、平日でなければ入手できないことがほとんどなので、仕事をしている方にとっては、負担となるかもしれません。

公正証書作成の基本的な手続きの流れは、以下のとおりです。

1 事前の相談(夫婦のどちらか一方でも可)

2 公証人が文案を作成

3 作成案をメールやFAXなどで当事者に送付(修正や加筆の要望があれば、この段階でする。)

4 公正証書の作成日を決める

5 夫婦で公証役場に出向いて公正証書を作成

費用がかかる

公正証書を作成する場合、公証役場に支払う手数料がかかります。金額的には取り決め内容にもよりますが、大きな金額になることはほとんどありません。

それでもお金を支払うということに負担を感じる方もいらっしゃいます。

相手方が公正証書作成に協力的でない場合の対処法

では、公正証書作成に消極的な相手にどうしたら、協力してもらえるか対処法を見ていきましょう。

「離婚しない」ことを提案する

これは、相手が積極的に離婚を望んでいる場合の対処法ですが、公正証書の作成に協力してくれないなら離婚はしないと提案してみるのもひとつの方法です。相手がどうしても離婚したがっているなら、こういった提案をすることで、シブシブでも協力してくれるかもしれません。

調停を申し立てると言う

「公正証書作成に協力してくれないなら、調停を申し立てる。」と伝えましょう。

調停になれば、

  • 平日の日中に仕事を休まなければならない
  • 出席しなければ相手の言い分は通らない
  • 調停は一回では済まない(離婚調停は、おおよそ1か月に1回開かれ、トータル3回程度裁判所に足を運び、そこで成立・不成立が判断されることが多いといわれています。)
  • 調停調書(調停で夫婦が合意した内容が記載される書面で、調停が成立すると作成されます。)があれば強制執行の手続きがとれる

この4つのことについて相手に説明しましょう。

そうすれば、公正証書作成の手間などとは比較にならない、さらに手間がかかる手続きが必要になり、さらに強制執行可能な文書が作成されることがわかるでしょう。

さらには、調停や裁判になって弁護士に依頼した場合、その費用は公正証書の手数料とは比べものにはなりません。

こうした理由から、養育費や財産分与など取り決め条件に合意できているのにもかかわらず、公正証書を作ることを拒み、調停や裁判をすることがいかに手間と費用がかかるのかを相手に伝えましょう。

公正証書を作成することでメリットがあることを話す

公正証書と聞くと、相手がお金を負担しなければならないという、相手にとっては、デメリットしかないイメージを抱くかもしれません。

しかし、公正証書を作成することには、相手にとってメリットもあります。

それは、公正証書を作成する場合、最後に「清算条項」というものを記載することがほとんどですが、この「清算条項」は、「今後は、この公正証書に記載された条件以外のことは要求しない。」というものです。

この「清算条項」を記載することによって、たとえば、財産分与や慰謝料について、「離婚の時には取り決めしなかったけど、やっぱり欲しいから支払って!」とか「足りないからもっと払って!」などと相手方が請求することができなくなります。

また、子どもとの面会交流など、お金を支払うばかりではなく、お金を支払う方の権利についても記載されることを話しましょう。

また、相手が、将来無職になって養育費の支払いが出来なくなったらどうしようと心配しているのであれば、「養育費の減額」についての調停などもできるので、そういう状況になったら、その中でお互いに納得できる方向で解決していこうと提案してみましょう。

また、強制執行される可能性や手間や費用などマイナスなことばかりでは、相手が協力しようという気持ちも萎えてしまうかもしれません。

そのため、「ちゃんと支払ってくれると信じているけど、子どもと生活していくために口だけではなくもっとしっかりした確証が欲しい。」「少しくらい支払いが遅れても、連絡をしてくれて理由を言ってくれれば、すぐに強制執行したりしない。」、「今まで夫婦としてやってきたんだから、できれば調停や裁判などをせず、穏やかに取り決めしたい。」といった相手の立場や気持ちに配慮した表現であなたの希望を伝えれば、相手の気持ちも解れてくるかもしれません。

自分の希望や主張ばかりを相手に押し付けるのではなく、相手の立場や気持ちをしっかり考えた上で自分の気持ちを伝えることが大切です。

まとめ

離婚後の生活を考えるうえで、離婚公正証書を作成しておくことは、大変重要なことです。

そのため、相手の理解と協力が不可欠となります。

この記事では、相手が離婚公正証書作成に協力的でない理由と対処法についてお話しましたが、肝心なのは、公正証書を作らなかった場合のデメリットをしっかり相手に説明することと、話し合いをするうえで、相手の立場や不安を考慮して、穏やかに話し合いをすることが相手に公正証書の作成を協力してもらうポイントとなると思われます。

時間は多少かかっても後悔のない取り決めを獲得するために粘り強く取り組みましょう。

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