貯金通帳を勝手に持ち出した妻に婚姻費用(生活費)を支払う必要はあるか?

妻が家を出ていってしまい、その際、将来マイホームを購入する予定で結婚後からコツコツ貯めていた預貯金の通帳と印鑑を勝手に持っていってしまった。その後、妻から婚姻費用(生活費)を支払って欲しいと言ってきたのですが、どうにも納得がいきません。このような場合でも夫は請求された婚姻費用を支払う必要があるのでしょうか?
婚姻費用(生活費)を支払う必要がある
この事例のように、別居時に家を出ていった配偶者が預貯金の通帳などを持ち出すケースはよくあります。持ち出した妻は、別居期間の生活費に充当するつもりで持ち出していることが多いと思われます。
とすると、夫としては「その預貯金で生活していけるだろうから、生活費を寄こせといわれても支払う必要なんてない!」と主張したくなる気持ちも理解できます。
しかし、夫婦には、同居義務のほか、互いに協力して扶養する義務(民法752条)がありますので、婚姻費用(生活費)についても相互に分担しなければなりません。つまり、単に預金通帳と印鑑を勝手に持ち出したという行為だけでは、この義務は免除されません。また、いわゆる算定表による婚姻費用の算定は、基本的には双方の資産を考慮せずに、双方の収入に基づいて行われます。
簡単にいうと、婚姻費用は原則として夫と妻の収入を基準に算定しており、妻が勝手に持ち出した夫の預金は、婚姻費用を算出する際考慮されないということです。つまり、原則として、夫は妻に請求されたら生活費を支払わなければならないということになります。夫にしてみれば、「なんで?」という気持ちになってしまうかもしれません。
しかし、過去には、妻が持ち出した預貯金を考慮したうえで婚姻費用の算定をした事例もありますが、実際は、妻が夫名義の預金を勝手に持ち出して別居した場合にも、法律上夫婦でいる限り、夫は婚姻費用の支払いをしなければならないということになります。
婚姻費用を負担しなくても済む場合がある
しかし、例外もあり、妻が不倫をして、その相手と暮らすために家を出て行った場合など、妻に非がある場合には、婚姻費用を支払わないで済む場合もあります。ただ、夫婦に子どもがおり、不倫した妻が子どもを連れて出て行ったケースでは、妻への婚姻費用の負担ましなくて済みますが、子どもへの監護費用相当額の負担はしなければならないでしょう。
また、婚姻費用を支払っていても、途中で夫の収入がなくなったり減ったりした場合には、婚姻費用の支払が免除されたり減額されたりすることがあります。
通帳やキャッシュカードの持ち出しに気づいたときの対応策
とりあえず、妻が家を出たときに、夫(自分)名義の預金通帳、キャッシュカード、印鑑などを持ち出してしまったことがわかった場合には、銀行などに通帳やキャッシュカードの紛失届を出して、妻が勝手に預金を引き出せないようにしましょう。
また日ごろから、このようなことが起きないよう、妻に金銭面の管理すべてを任せるのではなく、生活費口座は妻、預金口座は夫と分けてそれぞれ管理することもひとつの方法です。
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