熟年離婚の原因とメリット・デメリット

こんにちは、函館の行政書士 小川剛弘です。

2002年をピークに、離婚件数は減少傾向にあります。しかし、熟年夫婦の離婚、いわゆる「熟年離婚」の件数は、増加しているのです。そして、昨今、新型コロナウィルスが熟年離婚増加の一つの要因となっている可能性があります。今回は、熟年離婚の原因、メリット・デメリットについて解説いたします。

そもそも「熟年離婚」とは何か?

熟年離婚に明確な定義はありません。「長期の結婚生活の後、離婚すること」を熟年離婚とよんでいます。一般的には、年齢が50代以上で、20年以上の婚姻期間の後、離婚した場合を熟年離婚といいます。

厚生労働省「令和3年(2021年) 人口動態統計月報年計(概数)の概況 」によると、全体の離婚件数は2002年の289,836組をピークに徐々に減少傾向にあり、2021年は184,386組が離婚しました。全体的に減少傾向にある中で、同居期間が20年以上の熟年世代のカップルの離婚件数は増加傾向にあります。

なぜ熟年離婚が増えているのか?

では、全体の離婚件数が減少傾向にあるのに、なぜ熟年離婚は増えているのでしょうか?

平均寿命が延びたから

熟年離婚が増加した理由としては、熟年夫婦の数が増えたことが理由としてあげられると思います。つまり、平均寿命が延びていくことにより、夫婦でいられる時間が長期間となり、結果として熟年離婚が増えたと考えられます。

年金分割が可能となったから

2007年から導入された「年金分割制度」も、熟年離婚のひとつの要因として挙げられるでしょう。年金分割制度は、特に熟年夫婦が離婚した場合の夫婦間の「経済格差」を解消するために、2007年4月1日以降の離婚から適用されることとなりました。

一方が公務員や会社員として働いて収入を得て、他方が家事を行っていた場合、夫婦のいずれか片方のみが厚生年金を全額受給できることは不公平だとの判断からです。この制度ができる以前、専業主婦にとって離婚後にもらえる年金は国民年金だけだったので,なかなか離婚に踏み切れなかったという背景があったと考えられます。

年金分割制度が創設されて、専業主婦も離婚時に夫の厚生年金または共済年金の一部を自分の年金として、直接支払いを受けられるようになりました。年金分割制度のおかげで、離婚後の生活資金の確保がしやすくなったため、熟年離婚を考える人も増えたと考えられます。

離婚に対するイメージの変化

離婚件数は全世代を通して減少しているのですが、たとえば昭和の時代より離婚件数は多いのです。
ひと昔前には、離婚に対して暗いイメージを持つことが多く、世間体などを気にして離婚を思いとどまる人が多かったですが、現代では離婚は珍しいことではなくなりました。

むしろ、離婚することにより、前向きな気持ちになれたり、新しい世界が広がるなど、プラスの面もあったりするので、離婚に対するイメージは以前より大きく変わりました。そのイメージの変化が、離婚に対するハードルを下げたことも熟年離婚増加の一因と考えられます。

熟年離婚の原因

では、熟年離婚している人は、どのような理由で離婚を決意しているのでしょうか?

原因1 性格の不一致

性格の不一致は、熟年離婚だけでなく、離婚全体を通して一番の原因として挙げられます。熟年離婚の場合、結婚当初から性格や考え方のズレに気づきながらも我慢していたというケースや、配偶者の定年退職を機に夫婦が一緒にいる時間が長くなり、そこで考え方や性格の違いに気づいて離婚にいたるといったというケースがあります。

原因2 夫の親の介護や同居

夫の両親との関係が原因で、熟年離婚するケースもあります。義母や義父、配偶者の親族との関係うまくいかないなど、普段から我慢していたことが離婚にまで発展してしまうこともあります。

また、熟年夫婦にとっては、相手の親も高齢者となっていることが多く、親の介護が問題となり、離婚にいたることもあるようです。普段から嫁姑の関係が上手くいっていないと、「姑の介護をするなんて絶対嫌!」という女性は少なくありません。

原因3 DV・モラハラ

DV(ドメスティックバイオレンス)、モラハラ(モラルハラスメント)が原因で熟年離婚するケースも見受けられます。DVは力によって肉体的に暴力を加えることいいます。モラハラは力による暴力はないものの、言葉や態度などで相手に精神的な苦痛を与えることをいいます。長年DVやモラハラを受けていたが、子どもが大きくなるまでと離婚を思い止まっていた妻が、子どもの独立をきっかけとして熟年離婚するケースもあります。

熟年離婚のメリット

熟年離婚の一番のメリットは、配偶者や家族から解放され、自分のことだけを考えて生きられるということです。夫や妻の束縛もなくなり、義母や義父との付き合いに気を遣うこともなくなります。

これからは、自分のためだけに時間やお金を使うことができるのです。これまで出来なかった趣味や習い事に没頭し、第二の人生を充実したものにできるのです。

熟年離婚のデメリット

熟年離婚をすれば、相手のことを気にかけず、自由になることができます。しかし、メリットばかりではありません。熟年離婚にはデメリットもあることをしっかり認識しておきましょう。

熟年離婚のいちばんのデメリットは、配偶者であった者が亡くなったときに、相続権がないということです。夫婦であれば、相続に関して、配偶者は相続分や税金面でもかなり優遇されています。しかし、離婚すれば配偶者ではなくなりますから、相続権もなくなってしまいます。

また、熟年離婚の場合、特に女性は、収入面での不安が大きくなることがあります。夫婦共働きであった場合はあまり問題にはならないかもしれませんが、専業主婦だった方は、仕事探しを含め、自立できるかどうかをしっかり考える必要があります。仮に、年金分割や退職金を財産分与されても、老後の生活に必要十分な年金を確保できるわけではありません。財産分与や慰謝料をもらっても離婚後の生活をまかなえるとは限りません。

【参考記事】

離婚時に財産分与として退職金はもらえる?もらえない?

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そして、熟年離婚のデメリットは、お金の面だけではありません。夫婦が一緒にいれば、何かあったときに助け合うことができます。
離婚後は1人で生きていかなければなりません。病気や怪我をしたとき、助け合う相手もいないため、心細くなってしまうことがあるかもしれません。いざというときに、助け合える人がいなければ、たちまち孤独になってしまうことを覚悟しておくべきでしょう。

まとめ

熟年離婚に限らず離婚は、精神的にも肉体的にも負担が大きいものです。夫婦が生涯仲良く添い遂げることが何よりなのですが、どうして離婚したいと考えた場合、相手方に離婚を切り出す前に、離婚後の生活を十分想定しておくことが何より大切です。

熟年離婚は、慎重に考え、進めていかなければ後悔することにもなりかねません。また、離婚することによって相手や子どもの生活にも影響が出てくるでしょう。離婚後の暮らしや周囲に対する影響を十分に考えて後悔のない選択をするべきでしょう。

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