熟年離婚でネックになりやすい財産分与と年金分割

こんにちは。函館市の行政書士 小川剛弘です。

最近、熟年離婚(結婚後20年以上の夫婦)が増えています。

熟年離婚にはメリットもある反面、デメリットも存在します。

デメリットとして一番にあげられるものとしては、金銭的な問題が大きいのではないでしょうか。

特に、婚姻時代に専業主婦だった場合、離婚後、仕事を探さなくてはなりません。

年齢的にも、正社員として再就職することはなかなか難しくなるため、経済的に安定しづらくなり、金銭的に困窮するリスクがあります。

そのため、離婚を考えたら、離婚しても生活していけるのかということをしっかり考えておくことが必要です。

そして、「熟年離婚」を考えた場合、わかりにくかったり、もめることが多いものとして、財産分与と年金分割があります。

財産分与の対象をまずは把握しておくことが重要

財産分与とは、簡単にいうと、婚姻後に形成した夫婦の財産を離婚時に精算することです。財産分与の割合は2分1ずつが原則です。若年夫婦だと婚姻期間も短いため、資産もそんなに多くはないためそれほど問題となりませんが、熟年夫婦だと形成した財産が多く、もめやすくなります。

では、財産分与を考えた場合、まず最初にするべきことは何でしょうか。

まず、財産として何があるのか調べることです。

自宅不動産、預貯金、株式、ゴルフ会員権など、換金可能なものはすべて財産となります。生命保険も別居時あるいは離婚時の解約返戻金相当額が財産分与の対象となりますので、解約返戻金相当額を保険会社で調べてもらう必要があります。

退職金も財産分与の対象となります。離婚時に退職金をもらっていないとしても、財産分与の対象となります。会社の内規などから、別居時または離婚時に退職したとすれば、退職金額を算定し、その額が財産分与の対象財産となります。

マイナスの財産も財産分与の対象になる

婚姻時にマイホームを買ってローンを組み、離婚時にその残債がある場合には、その残債もマイナスの財産として財産分与の対象となります。

上述したように財産分与の割合は、原則2分の1ずつです。マイナス財産の場合も、半分ずつ負担することになります。

財産分与の対象財産を特定するのは想像以上に難しい

「結局、プラス財産でもマイナス財産でも2分の1ずつ分ければいいんでしよ。」と思われるかもしれませんが、いざ財産分与の対象財産を洗い出そうとした場合そんなに簡単にいかないことが多いのです。

たとえば、相手が財産分与を免れるために、意図的に財産を隠しているような場合、これをつけ出すことはなかなか難しいことが多いのです。

財産隠しの方法としては

・隠し口座を作りお金を貯めている

・株式口座を作り株を買っている

・相手に内緒で不動産を買っている

・へそくりを貯めている

・資産として価値があり、換金可能なものを所有している(ex 絵画や骨とう品)

これらを探し出すことはなかなか難しい場合が多いのが現実です。

そのため、普段から、夫婦の資産として何があるのか、たとえば、相手宛てに家庭で取引していない銀行や証券会社から郵便物が届いていないか、絵画や趣味にお金を遣うようになっていないかなど、普段からしっかり眼を光らせて観察しておくことが肝要です。

離婚を切り出されてから慌てて調べても、見つからないことが多いのが現実です。

専業主婦や夫より収入が低い妻にメリットがある年金分割の制度

熟年夫婦の場合、長年積み立ててきた年金があります。

婚姻期間中に築いた財産は、夫婦2人の共有財産として扱われるため、婚姻期間中に納めた年金保険料も共有財産に含まれます。

そのため、離婚の際に婚姻期間中の厚生年金記録に基づき夫婦で分割割合を決め、将来支給される年金を分け合うことが可能となります。

かつて、年金は分割の対象となりませんでした。そのため、専業主婦が離婚すると

元夫は年金の恩恵を受けることができるのに、陰で支えてきた妻が離婚後経済的に困窮してしまうという非常に不条理な結果となってしまいます。

こうした不条理な結果解消と専業主婦の老後の生活の安定を図るため、法律が改正されて、年金分割ができるようになりました。

年金分割には、合意分割と3号分割という2種類の分割制度があります。

3号分割は、請求者が「3号被保険者」だった場合に適用される年金分割です。「3号被保険者」とは、「会社員や公務員などサラリーマンの配偶者の扶養に入っていた者」をいい、

3号分割は合意分割とは異なり、第3号被保険者であった方が一人で手続き可能です。

そして合意分割は、分割の割合を夫婦が話し合い、合意によって決定する方法です。

合意分割の場合、法律では分割の割合を自由に決めることができますが、話し合いで折り合いがつかない場合、家庭裁判所などに審判や調停を申し立てて、そこで按分割合を決めてもらったり、話し合いで決めていくことになります。

裁判所の実務では2分の1つまり50%となることがほとんどのようです。

なお、年金分割の対象となるのは厚生年金のみとなります。厚生年金は主に企業に所属サラリーマンや公務員などが加入するものです。

年金分割の手続きをするには、まず「年金分割のための情報通知書」を入手する必要があります。入手したら、記載されている「分割できる範囲」「対象となる期間」などの情報を基に夫婦が話し合って按分割合を決めることになします。按分割合が決まったら年金事務所で手続きをするという流れになります。

まとめ

以上、離婚時に問題となりやすい財産と年金についてお話ししました。

財産分与については、どれが対象財産になるのか、相手の財産隠しなど気を付けなければならないことが多いのが現実です。また年金分割については話し合いで合意できたら「公正証書」などの文書にしておきましょう。

請求の際には証明書類を添付しなければならず。公的文書である公正証書であれば確実です。

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