夫の愛人にも遺産を分けなきゃいけないの⁈

こんにちは、函館の行政書士 小川剛弘です。

夫の死後、葬儀も無事終わり、相続手続を進めようと生前夫が書いた遺言書の中身を確認すると、そこには愛人の存在といくばくかの金銭を譲ると書いてあった。

元夫には、家族に隠して長年付き合っていた愛人がいたのです。

長年連れ添った妻や子どもにしてみれば、夫や父親の裏切りでも大きなショックなのに、その上、金銭まで渡すと書いてあったら、とてもやり切れない気持ちになってしまいますよね。

でも、実際の相続の場面ではありえないことではありません。

では、愛人のような相続人でない者に遺言書に従って財産を譲らなければならないのでしょうか。

基本的に愛人という立場の者に相続権はない

被相続人(故人)と生前関係のあった愛人は、法律上の婚姻関係にはないため、法定相続人にはなりません。

相続については、法律(民法)によって、財産を受け取る法定相続人(法律で定められているのでこう呼びます。)が定められおり、法定相続人として、被相続人の配偶者、被相続人の子どもや親、及び被相続人の兄弟姉妹といった血縁関係にある者が該当します。

このため、被相続人と婚姻関係のない愛人や内縁の妻(夫)などは、原則として相続人とはなりえません。

遺言書に記載がある場合には愛人も相続可能

被相続人が生前作成した遺言に、例えば「愛人○○に金300万円を譲る」という記載がされていた場合には、たとえ愛人が被相続人と婚姻関係がなくてもこの300万円というお金を相続することができます。

家族にしてみれば、とても複雑で納得しがたい事実かもしれませんが、遺言書の内容は、「故人の最後の意思」として尊重されるため、これに従えば、まずは、愛人への300万円の譲渡が、法定相続人への相続内容に優先されることになります。

このように、愛人は法定相続人ではありませんが、遺言書の内容によっては財産を相続する場合があるのです。

しかも、遺言書で愛人が相続人として指定されている場合は、法定相続よりもその内容が優先されることになります。

遺留分侵害や遺言書の要件に不備があれば相続できないことも

ただし、法定相続人の遺留分(※)について侵害している場合があれば、愛人が遺言のとおりに相続できるとは限りません。

また、遺言書が自筆証書遺言だった場合、自筆証書遺言には厳格な要件が定められているため、万が一不備があると、遺言の効力そのものが否定されることもあります。

※遺留分:一定の相続人に対して、遺言によっても奪うことのできない財産の一定割合の留保分(つまり、最低源の受取り分)のこと

愛人への遺言内容に遺留分の侵害があった場合はどう対処する?

遺言書で愛人に財産を譲る旨を記載していた場合には、愛人も財産を相続することが可能となりますが、その遺言書の内容が、一定の法定相続人に対して認められている、「遺留分」、つまり法律で定められた一定の受け取り分を侵害していた場合に、法定相続人はどのように対処すればいいのでしょうか。

こういった場合「遺留分侵害額請求」をすることで対処できます。

「遺留分侵害額請求」という制度趣旨には、そもそも相続の役割として、被相続人死亡後の配偶者その他の法定相続人の生活保障という側面があるため、法定相続分より多くの財産を相続した者に対して、一定割合の取り分を保障するため、この制度が設けられています。

ただし、遺留分侵害額請求を行使できる者は法律で決まっており、被相続人の配偶者や子ども、及び父母・祖父母までが行使できるとされており、被相続人の兄弟姉妹については遺留分侵害額請求をする権利は認められていません。

遺留分としてどのくらい認められるのかについては、割合が決まっており、その割合は、法定相続分の1/2です。

例えば、相続人が妻と子2人だった場合については

妻の遺留分については1/2×1/2=1/4となり、子どもについては、それぞれ1/2×1/2×1/2=1/8となります。

遺留分減殺請求には時効があることに注意

ただし、遺留分侵害額請求には、時効があり、「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時」から1年間行使しない場合、消滅してしまいます。

また、相続開始の時より10年を経過したときも同様に時効となります。

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