遺言書が複数見つかった場合の効力と遺言書の探し方

遺言書が何通か出てくることは、決して珍しいことではありません。法律では、作成数に制限がないので、何通でも作成可能です。そのため、気持ちが変わり書き直す方もいます。新しく書き直しをしたら古い遺言書を破棄していれば問題ないのですが、書き直したものを処分しないでそのまま持っていることがあります。

では、遺言者が亡くなり、遺言書が複数出てきた場合、どの遺言書が有効になるのでしょうか。この記事では、複数の遺言書が見つかった場合、どれが優先されるのか、また、複数の遺言書が見つかった場合に考えられるトラブルや手続き上の支障、遺言書の探し方について解説いたします。

日付の新しい遺言書が有効になる

たとえば、「Bに全財産を相続させる。」と書いてある遺言書と「Cに全財産を相続させる。」と書かれた遺言書が見つかった場合、どちらも内容が抵触し、両方を実現させることは不可能です。こういった場合はどう扱えば良いのでしょうか。

こういった場合は、日付の新しい遺言書の方が有効になります。日付の新しい遺言書が遺言者の “最後の意思”として尊重されます。そのため、遺言書が複数見つかったら、日付を確認して、新しいものに従うのがルールです。

ただし、「令和6年3月吉日」のような日付を特定できないものは無効として扱われますので、無視してもかまいません。

内容が抵触しない部分は古い遺言書も有効

このように日付が新しいもものに従うのがルールですが、内容が矛盾しない部分については、古い遺言書も有効となります。

たとえば、古い方の遺言書に「Bに預貯金を相続させる。」、新しい遺言書の方には「Cに不動産を相続させる。」と書かれてあれば、どちらも実現可能なので、日付の古い遺言書も有効になります。日付が新しければ、前の遺言の全てが無効となるわけではありません。

もし、古い遺言を撤回したいのであれば、新しい遺言に「以前の遺言を撤回する。」もしくはさらに正確性を高めるために「○年〇月〇日作成の遺言を撤回する」という文言を入れればさらに良いでしょう。

「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」が見つかったら?

遺言書が2種類見つかった場合、たとえば、ひとつは「公正証書遺言」とよばれる、公証人と証人2名が関与して作成された遺言書。もうひとつは、「自筆証書遺言」といって、遺言者が自分で書いて署名捺印した遺言書があったとします。

イメージとしては、自分で作成した自筆証書遺言より、法律の専門家と複数の人が関与している公正証書遺言の方が優先されるような気がしませんか?

しかし、この両者に効力の差はありません。

ただし、自筆証書遺言は、遺言の形式に厳格さを求められるので、形式に間違いがあると、遺言自体が無効になってしまうこともあります。ただ、この点の不安も遺言書の保管制度を利用すれば、保管の申請時に形式のチェックをされ、仮に形式に間違いがあった場合指摘してくれるので、正しい形式に訂正のうえで保管することができます。また、この保管制度を利用すれば、紛失や改ざんの心配がない、検認の必要がないというメリットもあります。

しかし、このように形式の問題をクリアしても、肝心の内容が法律に触れるものであったりすると無効になってしまう怖れがあります。たとえば、遺言の内容が理解不能なものであったり、公序良俗に違反していたり、第三者から強要されて作成されたものであったりした場合には、効力が無効になってしまいますので、自筆証書遺言を作成する場合には特に注意が必要ですので、自分で作成することが不安であれば、行政書士など遺言書作成の専門家に相談することをおすすめします。

効力については、公正証書遺言でも自筆証書遺言のどちらで作成しても優劣の差はありません。さらに、自筆証書遺言を公正証書遺言で撤回することもできます。またその逆も可能です。

知らずに古い遺言書の内容を執行したらどうなる?

遺言書が複数存在することに気づかず、日付けの古い遺言書の内容を執行してしまったらどうなるのでしょうか?

こういったケースでは、古い日付の遺言書は無効なので、一番新しい日付けの遺言書の内容で執行をやり直す必要があります。

そのため、銀行など金融機関の手続きについては、最新の遺言書の内容のとおりに分割をし直さなければなりません。不動産の場合には、移転した所有権を抹消した上で、本来の権利者へ移転し直さなければなりません。また、相続税申告を済ませていた場合には、修正申告も必要になってくるでしょう。

このように、複数の遺言がることを知らず、古い日付の遺言を執行してしまうと、手続き上のやり直しが必要となり、相続人間で揉めたり、手間も時間もかかってしまうことになるため、しっかり遺言書の有無と内容を調べてから執行することが大切です。

遺言書の調査方法

では、遺言書の有無や内容について、どのように調べれば良いのでしょうか。遺言の調査方法については、公正証書遺言と自筆証書遺言の場合で異なります。

公正証書遺言の場合

公正証書遺言を作成すると、遺言書を作成した本人の氏名や生年月日などの情報から、作成した公証役場や公証人、作成年月日などの情報が一元管理され、作成した公証役場でなくても、公正証書の有無や内容を確認することができます。

このシステムは、遺言者の相続人や「利害関係を有する者」など一定の要件を満たす人であれば、利用することができます。

自筆証書遺言書保管制度を利用している場合

令和2年度から全国の法務局において「自筆証書遺言書保管制度」が開始され、自筆証書遺言を作成した場合、その保管を法務局に申請することが可能となりました。

「自筆証書遺言書保管制度」についてはこちら

相続人などが、法務局に「遺言書保管事実証明書」の交付請求を行い、法務局に自筆証書遺言書が保管されているかどうか確認することができます。

この遺言書保管事実証明書の交付請求は全国の法務局で請求することができ、直接法務局に出向かなくても郵送での請求も可能です。請求書は法務省のホームページからダウンロードして印刷のうえ使用することができます。

ただし、遺言書保管事実証明書の交付請求をしても、遺言書の存在の有無のみ確認が可能であるため、遺言書の内容を確認したい場合には、「遺言書情報証明書」の交付請求をしなければなりません。

「自筆証書遺言書保管制度」を利用していない場合

自筆証書遺言書を法務局の「自筆証書遺言書の保管制度」を利用していない場合、自宅などの書斎や遺品の中に保管されている可能性があります。また、銀行などの貸金庫などに保管している場合もあります。

ただし、保管制度を利用していない場合、自筆証書遺言を見つけたときに、裁判所の検認手続きをしないまま開封してしまうと5万円以下の過料に処されたり、様々な手続きに支障が出ることもあるため注意が必要です。

まとめ

この記事では、複数の遺言書が見つかった場合の優劣や複数の遺言の存在を知らずに内容を執行してしまった場合に発生する支障やトラブル、そして、遺言書の探し方について解説いたしました。

遺言を複数作成することは可能ですが、古い遺言書が残っていると、トラブルや、その後の手続きに支障が出る可能性があるため、遺言書を作成し直したら、必ず古い遺言書は処分しましょう。

また、このようなリスクを回避するためにも、公正証書遺言を作成したり、自筆証書遺言書の保管制度」を利用することをおすすめします。

当事務所では、公正証書遺言や自筆証書遺言の作成サポートなどを行っておりますので、お気軽にご相談ください。