遺言書が複数出てきたらどうなる?

遺言書が何通か出てくることは、決して珍しいことではありません。法律では、作成数に決まりがないので、遺言書は何通でも作成可能です。そのため、気持ちが変わり書き直す方もいらっしゃいます。新しく書き直しをしたら古い遺言書を破棄していれば良いのですが、書き直したものを処分せずにそのままにしていたりすることがあります。そしていざ、相続の場面になり、遺言書が複数出てきた場合、一体どの遺言書が有効になるのでしょうか?

日付けの新しい遺言書が有効になる

たとえば、「Bに全財産を相続させる。」と書いてある遺言書と「Cに全財産を相続させる。」と書かれた遺言書が見つかった場合、どちらも内容が抵触し、両方を実現させることは不可能です。こういった場合はどう扱えば良いのでしょうか。

こういった場合は、日付の新しい遺言書の方が有効になります。日付の新しい遺言書が遺言者の “最後の意思”として尊重されるからです。そのため、遺言書が複数見つかったら、日付を確認して、新しいものに従うのがルールです。

ただし、令和4年10月吉日」のような日付を特定できないものは無効なので無視してもかまいません。

内容が抵触しない部分は古い遺言書も有効

このように日付が新しいもものに従うのが原則ですが、内容が矛盾しない部分については、古い遺言書も有効となります。

たとえば、古い遺言書に「Bに預貯金を相続させる。」、新しい遺言書には「Cに不動産を相続させる。」と書かれてあれば、どちらも実現可能なので、日付の古い遺言書も有効になります。日付が新しければ、前の遺言の全てが無効となるわけではありません。

また、古い遺言を撤回したいのであれば、新しい遺言に「以前の遺言を撤回する。」という文言を入れれば良いでしょう。

「公正証書遺言」「自筆証書遺言」が見つかったらどうなる?

遺言書が2種類あるような場合、たとえば、ひとつは「公正証書遺言」と呼ばれる、公証人(※)によって作成され、証人2名が立ち会って作成された遺言書ともうひとつは、「自筆証書遺言」といって、遺言者が自分で書いて署名捺印した遺言書があったとします。

イメージとしては、自分で作成した自筆証書遺言より、法律の専門家と複数の人が関与している公正証書遺言の方が優先されるような気がしませんか?

しかし、この両者に効力の差はありません。

ただし、自筆証書遺言は、遺言の形式に厳格さを求められるので、形式に間違いがあると、遺言自体が無効になってしまうこともあります。また、形式に問題が無くても、肝心の内容が法律に触れるものであったりするとこれもまた無効になってしまう怖れがあり、自筆証書遺言を作成する場合には注意が必要です。

それでも、効力についてはどちらも優劣の差はありません。そして、自筆証書遺言を公正証書遺言で撤回することもできます。またその逆も可能です。

併せて、遺言にはどのような種類があるの?もお読みください。

遺言書が複数あり、知らずに古い遺言書の内容を執行したらどうなる?

遺言書が複数存在することに気づかず、日付けの古い遺言書の内容を執行してしまったらどうなるのでしょうか?

こういったケースでは、古い日付の遺言書は無効なので、一番新しい日付けの遺言書の内容で執行をやり直さなければいけません。

その結果、不動産の移転登記や銀行などの手続きをやり直さなければならなくなります。また、相続税の修正申告も必要になることもあり、時間と労力と費用の負担が大きくなる可能性があります。そのため、このような無駄を省くためにもしっかり遺言書の有無を調べることが大切です。

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