「ペーパー離婚」とは?そのメリットとデメリット

最近、「ペーパー離婚」という離婚をする夫婦が増えているようです。その背景には様々な事情が存在するようですが、そもそも「ペーパー離婚」とはどういった離婚をいうのでしょうか?そして、「ペーパー離婚」をすることのメリット、デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?
「ペーパー離婚」とはどのような離婚か?

「ペーパー離婚」とはどのような離婚をいうのでしょうか?「ペーパー離婚」とは、法律婚から事実婚(内縁)状態にするために離婚届を提出することをいいます。法律的には離婚して姓を変えるものの、生活は今までどおり何も変わらず、戸籍上のみの離婚であることから「ペーパー離婚」と呼ばれます。
離婚届を出しただけで、実生活に変化がないので、周囲に離婚したことを気付かれることはありません。では、見た目の実生活が変わるわけではないのに、あえてペーパー離婚をする理由は何なのでしょうか?
夫婦がお互いに仕事を持っている場合、特に女性が仕事上の必要性から旧姓を使い続けることを望んでいる場合にペーパー離婚を選択することがあります。
他に、自分の旧姓に思い入れがあるからという単純なものから、旧姓の公的書類(パスポートなど)が必要になった場合などに、このペーパー離婚を選択する場合もあります。
離婚・再婚を繰り返す「ペーパー離再婚」
また、必要に応じて離婚・再婚を繰り返している方もいます。事実婚状態で暮らしている男女が、マイホームを購入しようとするときに、夫婦であることを証明するため住民票の入手が必要になり、婚姻届を出して法律上の夫婦になることがあります。
また逆に、法律上の夫婦であって、普段は相手の姓を名乗っているが、職場では、旧姓を通称使用し、自分の名前で住民票やパスポートなどが必要になったときは、離婚届を出すなど様々な局面で離婚と再婚を繰り返している方がいます。
こういったケースは「ペーパー離再婚」と呼ばれています。このペーパー離再婚を繰り返していると「偽装結婚」を疑われるため、おすすめしません。
ペーパー離婚のメリット

では、ペーパー離婚には具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
① 夫婦別姓でいられる
現在の日本の法律では、結婚するとどちらかの姓を名乗らなければなりません。でも、どちらかに性を合わせてしまうと、変えられてしまった方が仕事をしていた場合、旧姓から新姓へ変わった理由を取引先などに説明する煩わしさや、名刺やメールアドレスなどを変えることが面倒に思えたりします。
また、新しい姓が浸透するまで時間がかかり、自分のことだと認識されず、業務上混乱を招く怖れがあるなど、新しい姓に変えることで不都合が出てくる場合があります。
日本の社会では、結婚をすると基本的に、女性が男性側の姓に合わせることがほとんどです。しかし、女性の社会進出、自立が進んできている中で、法律の規定が時代に馴染まなくなってきているのも事実です。こういった場合に、ペーパー離婚をすることで、旧姓を使い続けている方がいるのです。
② 法律上の夫婦関係から解放される
夫婦という関係性を維持したいが、法律婚であるが故の義務や責任を背負うのは嫌だといった理由や、単に生まれたときから名乗っている旧姓に愛着があり、新しい姓に変えることに抵抗があるなどを理由にペーパー離婚を選択することがあります。
ペーパー離婚のデメリット

ペーパー離婚にはメリットばかりではありません、デメリットも存在します。
① お互いの法定相続人にはなれない
ペーパー離婚をすると、配偶者の法定相続人になることはできません。法律上の夫婦ではなく事実婚であるため、配偶者が死亡しても相続人にはなれません。
こういった場合、「遺言」を活用して相手に財産を相続させることが可能となります。ただ、自筆証書遺言の場合、費用はかからないものの、作成には厳格な要件があり、そのため、しっかりした知識がないと無効となるリスクも大きく、可能なら費用はかかりますが、公正証書遺言の作成をおすすめします。
② 戸籍に離婚歴が残る
ペーパー離婚は戸籍の記載上、離婚歴が残ります。また、ペーパー離再」を繰り返していると、それに伴い婚姻や離婚の履歴が増えていくことになります。
③ 周囲から理解を得るのが大変
ペーパー離婚という言葉や形態自体が、まだ社会に浸透していないため説明が難しく、なかなか理解を得られにくいのが現状ではないでしょうか。そして、子どもがいる場合、親が別姓であるというのは、他の家庭の親子から見て特殊と映ることもあるかもしれません。
④ ペーパー離婚について間違った見方をされる
ペーパー離婚を選択している夫婦のなかには、ペーパー離婚を悪用して生活保護費や児童扶養手当などの公的な扶助費用を不当に得ようとする者や母子家庭にのみ特有の優遇措置や、配偶者の資産を隠ぺいするためだけに、あえてペーパー離婚をするケースがあります。これは「偽装離婚」と呼ばれ犯罪になりますが、こういった目的でペーパー離婚を選択したわけではないのに、犯罪になることを知らなかったばかりに不要な疑念を持たれるおそれがあるので注意が必要です。とくに上述のように「ペーパー離再婚」を繰り返していると一掃疑念を持たれるおそれがあります。
まとめ
夫婦のあり方には様々な形態があります。今回取り上げた「ペーパー離婚」も夫婦としての一つのあり方だろうと思います。しかし、ペーパー離婚とういうものがまだ社会に広く認知されているわけではありません。
ただ、夫婦別姓でいられることや法律婚の夫婦であるがゆえの義務や責任から解放されるというメリットがありますが、相続権がない、周囲からなかなか理解されない、当事者には不正の意図が無くても、離婚再婚を繰り返すことによって「偽装離婚」とみなされ、疑念を持たれたりすることもあるなどデメリットも多いため、慎重に考える必要があります。
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