固定資産税や自動車保険料は婚姻費用から除外できるのか?

こんにちは、函館の行政書士 小川剛弘です。
婚姻費用とは、夫婦が生活をしていくうえで必要な費用のことをいいます。具体的には、①衣食住に必要な費用②医療費③子どもの教育費④交際費や娯楽費などがあげられます。
また、この婚姻費用は、夫婦が離婚を前提に別居した場合などに、収入の多い配偶者から収入の少ない配偶者に対して支払われるものです。たとえ、別居中であっても夫婦である以上、互いに協力扶助すべき義務がありますので、婚姻費用の分担を求めることができるのです。
そして、この婚姻費用の支払いに関して問題となるのが、婚姻費用を負担している配偶者が、婚姻費用の支払いを受ける配偶者の公共料金や自動車保険、固定資産税など、生活費の一部といえるような費用も負担している場合がありますが、本来、このような費用は婚姻費用に含まれるものなのでしょうか?それとも婚姻費用から除外しても良いものなのでしょうか?そして除外可能とすれば、その費用には具体的にどんなものがあるのでしょうか。
婚姻費用に含まれるもの

最も多いケースとしては、家を出て婚姻費用を負担している配偶者が、“婚姻費用とは別に”婚姻費用を受け取る側の配偶者が実際使用している電気・水道・ガス、固定電話料金やインターネット、自動車の保険料などを、別居後も引き続き支払いをしているというケースです。
では、婚姻費用にはどんなものが含まれるのでしょうか。婚姻費用は上述したように、生活に必要な費用全部ということになります。具体的には以下のようなものが含まれます。
・住宅費
・食費
・被服費
・家具や電化製品などの購入費
・水道や電気料金などの光熱費や電話などの通信費
・医療費
・交通費
・趣味などの娯楽費
・生命保険や医療保険などの保険料
・自動車費用(車の購入費、ガソリン代、自動車保険料、駐車場代など)
・冠婚葬祭費や生活レベルに応じた交際費
・子どもの教育費(学用品代、塾や習い事の代金)
費用については、子どもの有無、共働きかどうかなど各家庭の状況、収入や社会的地位によって違ってきます。
このように見ていくと、電気や水道、電話やインターネット、自動車を使用して利益を得ているのは、婚姻費用を受け取っている側の配偶者です。本来であれば、婚姻費用として月々支払われるものから、こういった公共料金は支払われるべきであるので 引き続き婚姻費用を支払っている配偶者がこれらの費用を負担していたとすると、その分は婚姻費用の金額から除外されることになります。
費用の控除はどうやるか

では、実際にどうやってこれらの費用を控除した金額を計算するのかが問題となってきますが、厳密に、毎月支払われている婚姻費用から、実際に支払った費用を控除して支払う方法もありますが、毎月計算するには手間がかかります。
また、婚姻費用を受け取る側としては実際に控除された後の婚姻費用の金額が、適正に計算されたものなのかを知ることは難しくトラブルになることもあり得ます。
そのため、相手方のために負担している費用の平均を計算し、その額を控除した婚姻費用を支払うということが行われることがあります。この方法で計算する場合、水道や電気代などの費用は、季節によって額が増減するので、1年間の平均額で計算することがポイントです。
また、自動車保険の保険料などは、事故などによって将来額が変わることも考えられるので、その場合の変動幅なども考慮に入れるべきでしょう。
次に、別居前に夫婦が暮らしていた婚姻費用を負担する配偶者名義の一戸建て住宅やマンションなどの不動産の修繕積立金や固定資産税、火災保険料や、マンションなどの管理費などを、家を出て婚姻費用を負担している配偶者が支払っている場合は控除の対象となるのでしょうか?
マンションの修繕積立金については名義人となっている婚姻費用を負担する配偶者の資産形成といった側面もあるとして、夫婦双方の収入などに応じて控除した裁判例があります。
固定資産税や火災保険料については、名義人の資産を維持するための経費としての側面があり、実際に暮らしている配偶者の生活に直結するとは必ずしもいえない面があるため、この部分を控除することは認められないと考えていた方が良いでしょう。
また、マンションの管理費については、実際に住んでいる配偶者が本来支払いをすべきとして控除されることが多いようです。