「財布は別々」な夫婦の財産分与はこじれると厄介

共働き夫婦が増えた現在では、財布を別々にしているご夫婦も多いかもしれません。
実際、このような夫婦はお互いを尊重し合うためか、お互いの収入や貯蓄に関して詮索したりせず、生活費については毎月共通の口座にお互いが決めた額を入金し、それで生活しているということが多いようです。
でも、このような財布を別にしている夫婦に離婚問題が生じると、財産分与について思わぬトラブルになることもあります。
「財布が別」な夫婦の財産分与の2つの方法 でもそれぞれ問題点もある

法律的には、婚姻期間中に夫婦で形成した財産はすべて夫婦共有財産とされ、お互い1/2ずつを取得することになるのが原則です。
ただ、お互いで話し合い、「何を財産分与の対象に含め、何を含めないのか」、「財産分与の割合を1/2ずつではなく4:6にする」という合意は可能です。
これは財産分与の対象にならないとか、1/2ずつ分けなければいけないというわけではありません。お互いが納得して解決できれば良いのです。
そして、財布が別々である夫婦が離婚する際の財産分与のやり方としては、次の2通りが考えられると思います。
①財産分与に関しても「財布は別々」という考え方で進め、お互いの貯蓄はお互いが取得するという合意をして解決を図る。
②すべての財産を開示した上で財産分与の原則(1/2ルール)にしたがって分ける。
しかし、婚姻期間中は財布が別でもお互い納得していたところですが、いざ離婚になると相手に対する不満や不信感から、「実は自分よりも相手の方が収入があって、貯金もたくさんあるのではないだろうか?だとすると、どうせ離婚すんだから財布は別々という考え方じゃなく1/2ルールを持ち出した方が得策じゃないのか。」といった考えが頭に浮かんでもおかしくはありません。
そして、財産分与の原則どおり進めようと、これまでの収入や貯蓄を洗い出そうとして、相手方に財産開示を求めたとしても、素直にすべてをさらけ出すとは限りません。
また、仮に素直に財産を開示しても、それまでの「使いみち」や隠し財産の有無などについて疑念が増し、紛争が激化するかもしれません。
とりわけ、紛争の種となりそうなパターンは、たとえば、夫婦の一方は貯蓄に励み離婚時に5,000万円の貯金があったが、他方の貯金が200万円くらいだったような場合です。つまり夫婦の貯蓄額に大きな開きがあるようなケースです。
こういった場合に、財産分与の原則にしたがって分与すると、5,000万円+200万円=5,200万円となり、これを1/2ずつ分けると2,600万円ずつとなります。
当然、5,000万円貯蓄した方は納得できません。
財布が別々というのは、婚姻期間中にお互いを尊重しつつ生活をしていく際には有益なやり方ですが、いざ離婚となった場合も「財布は別」の考え方を貫ければ➀の方法で解決できるのかもしれませんが、折り合いがつかなかった場合には紛争に発展しかねません。
紛争に発展し、裁判所に判断してもらうことになれば、原則1/2ルールが適用されることになります。
ただし、審判例では夫婦の一方が多額の貯蓄をしていたにもかかわらず、他方が好き勝手に散在していたようなケースで、財産分与の割合を調整しているケースがあるようです。
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