算定表にない養育費の計算はどうやるのか?

養育費の金額を決めるときの基準となるものに「養育費算定表」があります。

夫婦お互いの収入額と子供の人数を基に算出されており、『養育費を毎月いくら払うのが適切なのか』が示されています。

養育費算定表は、調停や裁判ではもちろん、夫婦が話し合って養育費の額を決める場合にも使用されます。

ただ、「算定表」は、子どもが3人までのものしか作成されていません。また、子どもが2人以上いる場合については、支払を受ける子ども全員が父または母のいずれか一方と生活している場合を前提として作成されています。さらに、養育費を支払う側(義務者)が再婚し、減額請求した場合はどうなるのでしょうか。

このように、算定表の条件に当てはまらない場合、どのように養育費の額を計算すれば良いのでしょうか。

養育費を算定する基礎となる「養育費算定表」

養育費の決め方としては、子どもが成人するまでに必要な金額を算出して、夫婦それぞれの収入に基づいて分担割合を決め、養育費の額を決定するというのが現実的かつ一般的な方法だと思います。

そして、金額は、基本的に夫婦の話し合いにより自由に決めることができます。

しかし、離婚する夫婦にとっては、子どものこととはいえ、前向きに話し合いをすることが難しく、なかなかまとまらないことが多いのも現実です。

そういったときに、“養育費の相場”いわば基準として使用されるものとして「養育費算定表」があります。(16年ぶりに改定され令和元年に公表されました。)

養育費算定表はこちら

養育費算定表は、離婚調停や離婚裁判などで、養育費を算定する際の参考資料として使われています。

また、夫婦が話し合って養育費の額を決める場合にも利用されています。

養育費算定表は、収入の多い方の親が子どもと同居している状態を仮定して、それと同程度の水準の生活をするために必要な子どもの生活費を計算します。

そして、この生活費を権利者(養育費を受け取る親)と義務者(養育費を支払う親)双方の収入の割合で案分し、義務者が権利者に支払うべき金額を求めることになります。

このような考え方に基づいて求められた数字が、算定表に記入されているのです。そのため、「養育費算定表」を見れば、おおよその養育費の金額が分かります。

養育費算定表に当てはまらない場合の計算方法

しかし、算定表に当てはまらないような場合もあります。

たとえば、算定表では子どもの人数は3人までを想定していますが、4人の子どもを引き取って養育している場合、養育費の額はどのくらいになるのでしょうか。また、以下のような場合にはどのように扱うのでしょうか。

・養育費を支払う人が再婚した場合

・子どもが2人以上いて、父と母のそれぞれの世帯に分かれて生活している場合

こういった場合、単純に「養育費算定表」に当てはめることはできません。そのため、算定表の基礎になっている「標準算定式」というものを使って計算することになります。

では、標準算定式とはどのようなものでしょう?

標準算定式は、最初に子供の生活費を算出して、その生活費を父親と母親の収入(年収)に応じた割合で負担するという考え方です。

子供の生活費が、親の収入(年収)の内どのくらいの割合を占めるのかが一般化されています。

具体的には、

子どもの生活費= 義務者の基礎収入×子どもの生活費指数÷(子どもの生活費指数+義務者の生活費指数)

養育費=子どもの生活費×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)

で計算されますが、これでは何をいっているのかわかりにくいので、具体的に「養育費算定表」にない場合について一つずつ見ていきましょう。

子どもが4人の場合の養育費の計算

事例

権利者(専業主婦)の収入が0万円、義務者(会社員)の収入が600万円、子ども2人が14歳と10歳、2人が15歳と17歳の場合

まず、子どもの生活費を計算します。

計算式は、子の生活費= 義務者の基礎収入×子の生活費指数÷(子の生活費指数+義務者の生活費指数)

※基礎収入とは?

ここでいう「基礎収入」は、「養育費算定表」を使うときの収入と異なるので注意が必要です。

公務員や会社員の場合は、給与の支払総額から、税金、職業費としての通勤費や被服費等、特別経費(住居関係費、医療費、保険掛金など)を差引いたもの。

自営業者の場合、課税所得から、税金、特別経費(住居関係費、保健医療費、保険掛金など)を差引いたものが基礎収入となります。

そして、その控除をした後の基礎収入の割合が設定されており、義務者と権利者それぞれの年収にその基礎収入割合を掛けて、基礎収入を計算します。

基礎収入割合は、年収を段階に分け、それぞれの範囲で年収の何%という具合に設定されており、給与所得者、自営業者それぞれ、以下のとおりです。

公務員・会社員(給与の総支払額) 割合
 0~75万円54%
 ~100万円50%
 ~125万円46%
 ~175万円44%
 ~275万円43%
 ~525万円42%
 ~725万円41%
~1325万円 40%
~1475万円39%
~2000万円38%
     自営業者(課税所得)割合
 0~66万円  61%
  ~82万円60%
  ~98万円59%
 ~256万円58%
 ~349万円 57%
 ~392万円 56%
 ~496万円55%
 ~563万円54%
 ~784万円53%
 ~942万円52%
~1046万円51%
~1179万円50%
~1482万円 49%
~1567万円 48%

事例の義務者と権利者の場合に当てはめてみると

義務者の基礎収入 600万円×41%=246万円

権利者の基礎収入 0万円×54%= 0万円

となります。

また、上記の計算式の中で生活費指数という言葉がありますが、生活費指数とは、標準的な大人を100とした場合に、子どもの生活費(統計から導いた基準となる生活費と公立学校教育費が考慮されている。)がどのくらいかかるかを示したものです。

生活費指数については、特別な事情がない限り、大人は100 15歳未満の子供は62 15歳以上の子供は85とされます。

このことから、事例の生活費指数は、権利者100、義務者100、15歳未満の子ども 62×2人、15歳以上の子ども 85×2人となり

子供の生活費=義務者の基礎収入246万円×(62×2人+85×2人)÷(62×2人+85×2人+100)

=183万5634円 

また、養育費の計算式は、

養育費= 子の生活費×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)なので、これに当てはめると

養育費=183万5634円×246万円÷(246万円+0万円)

=183万5634円 が年間の養育費の総額になり、1か月当たり、約15万2969円となります。

ただし、これはあくまでも養育費算定表を利用した簡易な方法ですので、たとえば、子どもが私立の学校に通っていた場合や多額の治療費がかかる病気に罹患しているなどの場合には、金額が変わってくることになるでしょう。

養育費を支払う側(義務者)が再婚した場合

次に養育費を支払う側(義務者)が再婚した場合に養育費の額がどうなるのかを見ていきましょう。

事例

元夫Aと5年前に離婚した私Bは、現在8歳になる子どもCを育てており、毎月3万円の養育費を受け取っています。 最近、元夫が再婚して、子どもが1人生まれたので養育費を減額して欲しいと言ってきました。 元夫にも新しい生活があるのは理解できますが、こちらとしても養育費を減らされることは厳しいのです。どうしても減額には応じなければならないのでしょうか。 元夫A会社員年収(給与)は500万円 私B年収(給与)200万円 子どもC8歳 小学生 元夫の再婚相手D無職 収入0円

元夫は、現在の妻と現在の妻との間の子どもに対して扶養義務があります。そのため、現在の生活を維持しながら、養育費の支払いを続けるのは、普通の会社員の収入では難しくなることが多いと思われます。そして、元夫が養育費の減額請求をした場合には、民法880条の「事情変更」に該当して減額されることになります。

減額された場合の養育費の金額が具体的にいくらになるのでしょうか。この場合も基礎収入と生活費指数を用いて算定します。

元夫の基礎収入割合は42%となり、基礎収入は210万円となります。

私Bの基礎収入割合は43%となり、基礎収入は86万円となります。

次に、互いの生活費指数ですが、再婚相手は元夫と同居し収入がなくため、再婚相手の生活費指数は、元夫と同居しているので、15歳未満の子の生活費指数と同じ65として計算します。

なお、再婚相手がおおむね年収100万円程度以上(パートなど)の収入がある場合には、生活費指数は0となります。

まず子どもAの生活費を計算しますが、計算式は

元夫の基礎収入×子供Bの生活費指数÷(元夫A+再婚相手D+元夫と再婚相手の間の子+子Cそれぞれの生活費指数の合計)

で求めることができ、事例の場合、210万円×65/(100+65+65+65)

≒46万円となります。

そして、子どもAの生活費を、元夫と私Bの双方の基礎収入で按分すると、元夫が支払うべき額は、46万円×210万円÷(210万円+86万円)≒32万6000円となり、毎月の養育費額は約2万7000円となります。

父と母のそれぞれの世帯に子どもが1人ずついて離れて生活している場合

事例

父の年収(給与)が400万円、母の年収(給与)が100万円、子どもA(16歳)は父と、子どもB(10歳)は母とそれぞれ生活している場合、養育費の金額はどのように算定されるのでしょうか。

この場合、A、Bともに母と生活している場合の「算定表」の結果から、母と生活するBの養育費に該当する金額を算定して、父の負担額を計算します。

具体的には、「算定表」によれば、父、母の年収額において、A、Bともに母と生活している場合の「算定表」の結果は6万円となります。

このうち、Bに該当する割合は、生活費指数で計算すると、62/(85+62)となり、6万円×62/(85+62)≒2万5000円となります。

したがって、父は、Bの養育費として、2万5000円を支払うべきことになります。

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